2006–04–25 (Tue) 19:00
昔々の、そのまたむか〜し。
あるところに女がおったげな。
そしてまた、その隣には男がおったげな。
女のあだなは 「ス」、男のあだなは 「ぶ」 と、いったげな。
この二人ときたら、なんでまた、こげん可笑しなあだなば付けたとかいなねぇ。
それはもう、二人が知りおうた時に遡るとやけど。
女の前の彼氏が女のことば、「みーちゃん」 って呼びよったと。
で、次の彼氏であるその男も、最初の方は女のこと 「みーちゃん」 って
呼びよったちゃけど、女の方は昔の彼氏のことば思い出して、
何ともいえない気分になるけん、止めて欲しかったと。
やけん、ある日 「 他の呼び名にして 」 って男に頼んだとたい。
そしたら男は、「みーすけ」 って女のことを呼びよった。
女は内心で 『みーちゃんもみーすけも、大して違わんやない!
もっと他に呼びようはないとかいな?』 とか、思いよったっちゃけど、
そげなことはおくびにもださんで、なにくわん顔して冗談で
「みーすけじゃないよ。みけすだよ。」 って 返事ばしたと。
そしたら、これを聞いた男は 「おぅ!ミケスかぁ。それ良いなぁ!」 と、
なぜか、ことのほかお気に入りの様子で、以後もずーっと
「ミケス!」 「ミケス?」 と、女に呼びかけるごつなったと。
これはもう、二人の間では頻繁に呼び交わされるごとなって
女も男のことば、字数合わせて 「ヒデぶ」 って省略して呼ぶごとなったと。
本当の名前は、もちーっと長かったけん、はじめの漢字一字を取って 「ヒデ」
その後に、少し可愛く聞こえるかと思って 「ぶ」 をくっつけただけやけど。
ある日のデートの途中、道ではぐれそうになった女に、彼氏が
「ミケス!」 って呼びかけたら、近くにいた数人がえっらい驚いてくさ、
ものすごい勢いで女の方を向いたげな。
『どげな、外国の女子かいな?』 とでも、思ったとかいなねぇ?
それより、女子かどうかもわからんような呼び名やけんねぇ。
単に 『何者かいな?』 って、そげな興味本位やったとかもしれんねぇ。
たぶん、そうやろうねぇ。
女と男は結構長い事付き合いよったけん、男は女の事を、時々気分で
「ケス!」 とか 「ケス小僧!」 とか呼ぶ事もあったと。
「ス小僧」 とか 「ス」 とか呼ぶこともあったけど、いつもいつも二人は
それで話が通じよったけん、不思議にも思わんやったったい。
女もそれに合わせて、男の呼び名ば短くしたけん、ついに二人は互いを
「ス」 と 「ぶ」 って呼ぶごとなったげな。
とうとう、どっちの呼び名にも、本名は一文字も入っとらんごとなったと。
でも、呼ばれれば、互いに返事ばすると。
それが自分の呼び名ってこつが、言葉の調子でわかるけん。
名前って、不思議なもんやねぇ。
本当は、何でも良いとかいな。そうかもしらんねぇ。
親しみがこもった呼び方やったら、やけどね。
まぁ、そんな事もあったとやけど、この二人はとうの昔に別れてしまったけん、
今は昔の物語。